感覚統合は発達障害支援の要
メンタルネットinとちぎ 専門職のための夏期講習2018
7月22日に上都賀総合病院で開催されました。
メンタルネットとちぎは2012年に職種と立場を超えて精神障害者支援の体制つくりを目指して設立されました。
今回初めて同会の講習会に参加しました。
テーマ:支援に役立つ!!発達障害のアセスメントと対応 〜人間発達と感覚統合の視点から〜
講師:関森英伸 (国際医療福祉大学作業療法学科 講師)
講師紹介 国際医療福祉リハビリテーションセンターにある重症心身障害児施設/なす療育園での臨床を積みながら、発達障害領域の作業療法の専門家として、国際医療福祉大学での作業療法学生の養成に尽力されています。講師紹介ページ https://otawara.iuhw.ac.jp/staff/sagyou/2896.html
発達障害児・者の方の支援に携わって20年になります。現在は栃木県自閉症協会で行われている、親御さんの会合に参加しています。
支援の充実を
親御さんから様々な悩みが寄せられ、発達障害の方々の支援は充分ではないと感じています。
日光市では健康課での早期発見、教育委員会に所属する臨床心理士の方による支援、学力向上の取組として、平成26年度から「日光市個別支援教室」 (臨時指導助手による通級的な 支援教室)を試行的に設置しています。今市第二小学校、南原小学校、日光小学校の 3 校に設置しま した。
更にこの度児童発達支援事業所「ミニヨンズラボ」さんが出来ました。母子通園ホームに勤務していた方が退職し、児童発達支援事業所を開設したいとの相談を受けて、共に施設見学、事業所設立のためのアドバイザーの紹介をさせて頂きました。その方の大変な尽力で、設立されたものです。
このように発達障害のお子さんの支援では手厚いものがあります。が問題は高校進学や就労など成人期の方々の支援がないことです。更に言えば成人になって発達障害の診断された方の支援は日光市独自のものはありません。
発達障害の実態
発達障害については基本的な点に関しても、まだ十分に把握されていない状態です。例えば、日本に発達障害者が何人いるのか。その全国的な調査はこれまで行われていないため、人数は明らかではありません。
文部科学省は「特別な支援を必要とする児童生徒は6%以上いる」という推計値を出しています。
発達障害支援法
そのために平成16年に、長年にわたって福祉の谷間で取り残されていた発達障害者の定義と社会福祉法制における位置づけを確立し、発達障害者の福祉的援助に道を開くため、「発達障害支援法」が制定されました。
雇用支援に関しては、「長期にわたり職業生活に相当の制限を受け、または職業生活を営むことが著しく困難」であると認められる発達障害者の方は、障害者雇用促進法上の障害者として雇用支援施策の対象になりました。
しかし発達障害の方々の様々な障害の実情が充分に理解されず、
障害を軽減する支援も確立されていません。
感覚統合
支援法の中で有効だと思われるのが感覚統合です。15年以上前ですが、看護士の資格がありましたので、感覚統合の専門家向けの講義を受けました。
宇都宮市で受講したので、県内に感覚統合が広がっているものと思っていたのですが、親御さんの相談を受けるなかで、感覚統合を知ったのがこどもが大きくなってからとの話が最近でもよく聞くため、改めて受講させて頂き、広げる事が出来ないかと受講しました。
作業療法士の支援の重要性
講師の方の自己紹介から始まりました。
静岡県生まれで39才。作業療法士歴18年。リハセンに関わりながら、教員半分で国際医療福祉大学に所属。
発達障害の成人にも接している。
リハビリテーションとは本来ある姿へ戻すこと。障害を薄くする支援。発達障害に重要なのは代償支援・環境調整である。
そこで感覚統合療法を作業療法士は行っている。
感覚統合は簡単ではない。そこを理解して始める事が重要。でないと結果を求めすぎてしまい、本人を苦しめることもある。
塾が忙しいと感覚統合をやめた後に再開してくる場合もある。継続した感覚統合療法を受ける必要があるが就学前に終わってしまう事が多い。
感覚が統合されていないと遊び、学習にも支障がある。やがて就職にも支障が出る。
ソーシャルスキルと感覚統合は密接な関係があるので、学校と支援のあり方についてやり取りもしている。
感覚統合がうまく行っていず、引きこもりの人も多い。
感覚統合の基本原則
「感覚」とは、私たちの身体の内外から受け取ることができる刺激のことを言う。視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚の五感以外に、「固有受容覚」と「前庭覚」という大事な感覚がある。
感覚統合療法は、A.J.Ayres(米)により考案され、1980年代に日本に紹介された。A.J.Ayresは感覚統合を「脳がうまく使える形で感覚を組織化すること」と定義。
通常10歳までで統合されるが発達障害は統合がされず残ってしまう。そのために10歳境で支援を変える必要がある。
スッゴいぞ、LlTALICOさん!
感覚統合の事は詳細を知って欲しいので、以下はLITALICO発達ナビ発達障害ポータルサイトLITALICO発達ナビさんから抜粋しました。講師の方は専門的な話を、短い時間枠の中で話さなければいけないために、随分と割愛されたようです。
LITALICOさんは発達障害関係では全国随一の企業です、是非知っていただきたいので紹介します。放課後児童ディから就労支援まで手掛け、2005年12月に仙台からスタートした事業は2018年3月現在、全国で173事業拠点まで拡大しています。スタッフ総数は1600人を超えます。
LITALlCOさんのビジョン
障害のない社会をつくる。
障害は人ではなく、社会の側にある。社会にある障害をなくしていくことを通して多様な人が幸せになれる「人」が中心の社会をつくる。
昨年LlTALICOさんの本社で講習会があったときに行き、若い素敵なスタッフが揃っていて驚きました。
感覚統合、抜粋
固有受容覚は自分の身体の位置や動き、力の入れ具合を感じる感覚です。
受容器は筋肉や関節です。
固有受容覚には主に以下の6つのはたらきがあります。
①力を加減するはたらき
机や椅子を運ぶ時はギュッと手に力を入れて持ちます。逆に豆腐や卵を持つときはそっと優しく持ちますよね。
このように活動によって私たちは力を加減しています。そのときに重要な役割を果たしている感覚が固有受容覚です。
②運動をコントロールするはたらき
ジェンガを行う時はゆっくりと手を動かす(肩・肘の関節をゆっくり動かす)と思います。
このように関節をゆっくりと曲げ伸ばしできるのも固有受容覚がしっかり働いているからです。
③重力に抗して姿勢を保つはたらき(抗重力姿勢)
手を使った活動をするときには重力に抗して身体を持ち上げて姿勢を保つ必要があります。
このように身体を持ち上げて持続的に姿勢を保つのは固有受容覚のはたらきです。
④バランスをとるはたらき
バランスをとるときに自分の身体の傾きを感じるのは主に前庭覚のはたらきですが、転ばないようにすばやく筋肉を調整して姿勢を保つことは主に固有受容覚のはたらきです。
⑤情緒を安定させるはたらき
例えば緊張している時に貧乏ゆすりをしたり、イライラしている時に奥歯を強く噛んで口に力を入れたりしたことはありませんか?
このように固有受容覚を感じることで情緒を安定させるはたらきがあります。
⑥ボディイメージ(身体の地図を把握する)の発達を促すはたらき
固有受容覚は触覚とともに身体の地図を把握するために必要な感覚の一つです。
⑦ボディイメージ(身体の機能を把握する)の発達を促すはたらき
固有受容覚は前庭覚とともに身体の機能を把握するために必要な感覚の一つです。
特に、固有受容覚は手足の動きを把握する上で重要な感覚であり相手の動きを真似したり無意識に(リズミカルに)手足を動かしたりすることに大きな役割を担っています。
前庭覚
「前庭覚」は、自分の身体の傾きやスピード、回転を感じる感覚です。
前庭覚の種類は、このようなものがあります。
1人ひとりの「感覚の特性」を考えよう!よく聞く感覚統合ってなに?の画像4
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前庭覚は自分の身体の傾きやスピード、回転を感じる感覚です。
受容器は耳の奥にある耳石器と三半規管です。
前庭覚には主に以下の5つのはたらきがあります。
①覚醒を調節するはたらき
前庭覚は覚醒(脳の目覚め具合)と大きく関連しています。
例えば授業中に眠くなったとき、頭を振って目を覚まそうとした経験はありませんか?
これは脳がぼんやりしているときに、前庭覚を取り入れることでシャキッと脳が目覚めてエンジンがかかりやすくなるからです。
②重力に抗して姿勢を保つはたらき(抗重力姿勢)
私たちが地球上で生きていくためには身体が重力に負けていては生活できません。
何か活動をするときには重力に抗して身体を持ち上げて姿勢を保つ必要があります。
この重力を感じるのは前庭覚のはたらきです。
③バランスをとるはたらき
バランスをとるときに自分の身体が傾いているかどうかを素早く感じるのは主に前庭覚のはたらきです。
④眼球運動をサポートするはたらき
くるくる回転したら目が回りますよね。
これは回転という前庭覚が眼球を動かす筋肉と連動し、目が回るという仕組みで起こります。
このように前庭覚と眼球を動かす筋肉には関連があります。
⑤ボディイメージ(身体の機能を把握する)の発達を促すはたらき
前庭覚は、固有受容覚とともに自分の身体の機能を把握するために必要な感覚の一つです。
身体の機能が把握できることで、この距離なら跳べるかな?この高さなら飛び降りれるかな?などを把握し適切に環境への挑戦を行うことができます。
感覚が統合していくと、できることが増えていきます。
また講習会から話を戻します。
感覚の統合を促す療法
料理は効果的
鈍感と過敏、個人差が激しい
発達障害の方には、感覚で鈍感な所や過敏な所がある。刺激を求めるのは鈍感だから。光り、匂いに過敏な人もいる。個々人で違う。
聴覚が過敏な人で、スーパーの様々な音がパチンコ店のような大音量に捉えられる人もいる。
NHKスペシャル「発達障害~解明される未知の世界~」の1部上映もあり、障害のリアルがよくわかった。
書籍・団体紹介
感覚統合日本学会会長、土田玲子さんの著書
当事者のニキリンコさん著書「自閉っこはこういうふうに出来てます」
愛知県親の会アスペ・エルデの会は、発達障害をもつ子どもたちの支援の場、自助会、専門家養成、発達支援についての啓発、発信点、研究機関を統合的に目指していく「生涯発達援助システム」
自助具のイヤーマフの紹介
懇親会
講習会後に参加者の方々と昼食をしながら、懇親会がありました。名簿の所を見て、この人に話を聞きたいと事務局の方に言うと呼び出してくれ、以前からおあいしたかった鹿沼市で発達障害の方々の支援をしているCCVさんのスタッフさんに引き合わせて頂きました。
「ミニヨンズラボ」設立の育先生もおみえで、感覚統の講習会日光市でやりましょうと意気投合しました!
。。。またまた長文💦スミマセン